「等々力は一番思い入れがあるスタジアムなので。U-12時代から夢見た舞台。ジュニアの時から目指してきたチームのホームスタジアムなので」/ DF田所莉旺


憧れの先輩。かつてのチームメート。スタンドから声援を送る仲間たち。サポーター。さまざまな人の思いを胸に、ピッチに立った。

 
12月28日、国立競技場で行われた全国高校サッカー選手権大会開幕戦。京都橘との一戦に臨んだ帝京のDF田所莉旺。
 
U-12から育ったフロンターレのアカデミーを、U-18の1年生で退団し3年生で臨んだ初めての大きな舞台。
 
スタンドからは声援を送るチームメートたち。「あいつらのぶんも」「ここで負ければ、引退」。メンバーに入れなかった仲間たちの思いも胸にプレーする。そんな思いがあった。
 
フロンターレU-18時代の田所莉旺選手。プレミアリーグEASTの舞台にも立った
 
 
2022年のプレミアリーグファイナルで、サガン鳥栖U-18に2-3で敗戦。準優勝で終わった川崎フロンターレU-18
 
 
国立競技場は、憧れの先輩たちが立ち、悔しい思いをした舞台でもある。2022年のプレミアリーグファイナル。U-18としては初めての全国タイトルを懸け、サガン鳥栖U-18と対戦。高井幸大、松長根悠仁、大関友翔。大好きな先輩たちが死力を尽くしての、結果は2-3。プレミアリーグEASTで出場した田所のもとには、サッカー人生でもっとも大きく、でも一番ではない、シルバーのメダルが残る。
 
フロンターレU-18を離れても自分を励ましてくれた先輩たちからは「絶対国立で取ってくれ」。そんなメッセージがあった。
 
「昨日大関さんはレンタルバックが発表されたんですけど。それでしゃべって『帰ってくるんですね』って話をして。
 
『そんなことどうでもいいから、選手権頑張れよ』って。自分的には『お帰り』っていう気分だったんですけど。
 
『頑張れよ』『応援しているから』って言ってもらえたので。『頑張ります』っていうので、やっぱりここのピッチであこがれていた先輩が負けてしまったので
 
選手権とプレミアリーグでは舞台は、違うかもしれない。それでも「国立で勝ってほしい」「国立でタイトルを取ってほしい」。かつて、背中を追った先輩たちからは、思いを託された。
 
 
 
スタンドに目をやればゴール裏には「田所莉旺」のフロンターレカラーの幕。
 
勝てば、31日の2回戦の舞台は等々力。フロンターレから離れても自分の後押しをしてくれるサポーターたちはきっと、来てくれる。等々力のピッチに立つ、自分の姿を見守るために。
 
「やっぱり等々力は一番思い入れがあるスタジアムなので」。U-12時代からトップチームの選手としてプレーをすることを夢見た舞台。「ジュニアの時から目指してきたチームのホームスタジアムなので。本当にそこに行きたいなって」。組み合わせが決まり、東京の代表のチームとしては珍しい試合会場に、縁も感じたという。
 
 
 
全国大会の舞台は、かつての仲間たちとの対戦を乗り越えて、つかんだものでもあった。予選の決勝、対戦したのは國學院久我山。ゴールを守るのはU-12からU-15までのチームメート、太田陽彩。攻撃のタクトをふるったのはU-15時代のチームメート、村瀬悠馬。
 
「陽彩は本当にいいキーパーでしたし。悠馬も多彩なテクニックを持っているっていうところで。
 
2人も本当に上手な選手ですし。やっぱりそれはリスペクトしている部分なので。
 
去年あそこで自分たちが負けて。出られなかったので。その相手と決勝でやれるってなって」
 
「『絶対倒してやろう!』っていう思いはあって。試合前から話していて。準決勝ぐらいから『絶対勝てよ』って会話をお互いしていたので。勝ったあとも3人でごはんに行ったんですけど。その当日に行って」
 
太田陽彩選手
村瀬悠馬選手
 
「村瀬と太田は『自分たちが全国で負けたら次は俺たちがごはんつれていってやるよ』っていうような話で言われたので。『負けないから』『行く機会はないから』って話をしました」
 
乗り越えたかつてのチームメートたちからのエール。「負けたくない」「勝たなければならない」。そんな思いも胸に、立った全国での舞台だった。
 
 
 
勝ち上がれば、対戦する可能性があるのは、金沢学院大附属。ゴールを守るのはU-15時代のチームメート、石山アレックス。
 
 
フロンターレU-15時代の石山アレックス選手
 
等々力でアレックスとやれる可能性があるのも何かの縁だなって思うので。
 
明日アレックスが勝つのをテレビで見ようかなと思っています」
 
かつてのチームメートと、ともに目指した等々力の舞台でやれるかもしれない。そんなめぐり合わせも、感じている。
 
 
 
決勝まで進まなければ、対戦することはできない選手もいる。長崎総科大附のFW坂本錠。フロンターレU-15を2年生で離れ、川中島中を経て、長崎へ渡った盟友。 開会式後には写真も撮りあった。
 
 
坂本錠選手
 
 
「本当に思い入れのある選手ばっかりですし。戦ってきた仲間でもあるので。
 
やるからには負けたくないですし、自分の良さをお互い出し合って、ぶつかりたいというのはあります」
 
思いを胸に臨む大きな舞台。帝京という伝統のあるチームで1勝を刻んだ。しかし、それは、過程でしかない。先に進めば、お互いに競い合ったチームメートたちと対戦できるかもしれない。勝ち上がれなければ、対戦することができない、そんな仲間もいる。
 
 
 
たくさんの人たちの思いを胸に、12月31日、等々力のピッチに、田所莉旺は、立つ。
 
 
 

 

 

 
(文中敬称略)

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