「自分を信じて育ててきてくれたチームに対して一番感謝を伝えるには早慶戦だったり関東リーグに出て、結果で示すことが一番の恩返しと思います」 / GK山本健翔


 

11月26日、大学1、2年生を対象とした各地域の新人戦で上位に入った12チームが競う「全日本大学サッカー新人戦」が開幕。

川崎フロンターレアカデミー出身の選手たちも試合に臨んでいます。

 

11月27日清瀬内山運動公園サッカー場B面で行われたグループリーグ第2節、慶應義塾大 vs 高知大では、川崎フロンターレU-18出身のGK21山本健翔(1年)が控えに。

42分に先発したGK1福井大次郎が退場となり、慶應義塾大が数的不利となる中、出場しました。

 

山本健翔選手

 

試合は45+2分に高知大も退場者を出し、10人同士の戦いに。

後半慶應義塾大がボールをうまくつないでいき、攻勢に出る時間が続くも、高知大も粘り強い守りで対抗。
決定機をつくりながらも、なかなかゴールを割れない時間が続いていきます。

それでも、GKの山本も時にはセンターライン付近まで出て、組み立てに加わっていく慶應義塾大。

 

 

78分に三浦大其がゴールを決め先制すると82分には、オウンゴールで2-0に。

しかし、高知大は84分ぎりぎりのところをうまく抜け出した10坂本陽が決め1点差とすると87分には、右からの攻勢に持ち込み、こぼれ球に詰めた7高橋由馬が決めて2-2に。

第1節は、静岡産業大に0-1。決勝トーナメントに進出するためにはまずは勝利が必要な慶應義塾大。
下を向かずに前に出ていくと、90分には阿部雄大が勝ち越しのゴールを決め、3-2に。

その後も追加点を見せる姿勢を見せて前に出る時間もつくった慶應義塾大が勝利。
予選リーグでの戦績を1勝1敗とし、順位は2位に。11月28日の最終節第3節で、首位に立つ関西大との試合に臨むことになりました。

 

 

アクシデントでの出場となった山本。失点の部分では課題が見える場面もありましたが、正確なキックなどでチャンスメークにつなげる場面も。

声を後ろからかけ続け、後半には1対1の状況でシュートを止める場面もあり、そういったプレーのひとつひとつが、チームの先制点にもつながり、最後には勝利にもつながったように思えました。

 

 

 

試合後に山本健翔に話を聞きました。

 

山本健翔選手

 

〇今日試合を振り返ってみて、いかがですか?

やっぱり自分は最初ベンチスタートで。1個上のマリノス(横浜F・マリノスユース出身の)大次郎君がイレギュラーな形で退場してしまったので。

少し最初のほうは緊張感もあったんですけど。

ちょっとラッキーなかたちで同数になったので。けっこうリラックスしてできたかなと思います。

後半は何本かセーブもあって。自分がノリノリになったところもあったんですけど。

少し自分の判断ミスだったりで、失点に絡んでしまったことは明日に向けての反省になると思います。

 

〇慶應はすごいキーパーが組み立てに加わる回数が多くて、それが魅力のように思います。

そうですね。監督が中町さん(中町公祐監督)で。中町さんのサッカースタイルが、キーパーも入れて数的優位で後ろから回していくっていうものなので。

今日なんかは人数が10人になってからは、キーパーも入れて、スペースが多くなっているので、キーパーももっと前に出して「押せ押せで行こう」って話はしていたので。

今日はけっこう自分が前にポジションを取って、プレーすることができたなと思います。

 

〇だいぶキックもいいところにつけていたように思ったんですけど、手ごたえはありますか?

そうですね。この半年ぐらい、肩を手術していたのもあって、キーパーのトレーニングというよりはひたすらビルドアップ練習をメニューでやってきたので。

そういうところが少し今日の試合でも出せたというところが良かったかなと思います。

 

〇逆にちょっと良くなかったなと思うところは?

1失点目なんかは、自分の判断ミスのところで。ユースの時からガミさん(浦上壮史GKコーチ)に「決めつけで出る」と言われていたんですけど。

やっぱり出ているので。そこは今後練習の中で改善しないといけないというところと。

2失点目もやっぱり自分の前にこぼれてきたボールをキャッチできずに、ああいう失点をしてしまったので。

細部にこだわるというところはこだわらないといけないと思います。

 

〇大学1年目、ここまで振り返ってどうですか?

ユースを卒団してから3月上旬に左肩をけがしてしまって。

そこから復帰してすぐけがというのを繰り返していて。

8月に手術をしたんですけど。自分的にも十分とはいえないシーズンだと思っていて。

けがした分、フィジカルのところだったり。ユースの時は蹴っていなかったんですけど、キックのところを伸ばしていたので。

来年以降、もっともっとIリーグなど、試合に絡めたらと思います。

 

〇大学を通してどんな選手になりたいですか?

まずはやっぱり自分がフロンターレで育ててもらったっていう意義を、やっぱり示したくて。

やっぱりユースまでの6年間であまり試合に絡めていない時期が多かったり、けがでできていない時期が多かったりして。

やっぱり、これまで自分を信じて育ててきてくれたチームに対して、一番感謝を伝えるにはやっぱり早慶戦だったり関東リーグに出て、結果で示すことが一番の恩返しかなと思いますし。

もちろん大学を卒業して、フロンターレに帰るということは目標に掲げているんですけど。

そのフロンターレへの感謝ということがどんな形であれ、必ずアカデミーをはじめ、チームに何かしらの形で感謝を伝えられたらと思います。

 

〇フロンターレの話になりますけど、今年はソンリョン選手(チョン・ソンリョン)、(が退団することが決まって)。あとは安藤選手(安藤駿介)が引退することになって、それに対して、思うところはありますか?

ソンリョン選手に関しては、自分がキーパーを始めたころからずっと正ゴールキーパーとして、座っていて。

自分がフロンターレのエリートクラスに入るときに、ソンリョン選手、かっこいいなと。自分がキーパーに転身する一押しが、やっぱりソンリョン選手の活躍だったので。

本当に自分のターニングポイントじゃないですけど。きっかけを与えてくれた選手だなって思いますし。

安藤選手もやっぱり自分がトップチームの練習に参加したときとかに、いろんな深い話というか、プロの世界の話だったり。

安藤選手、すごい経験豊富で。いろんな経験をしてきている選手で。

自分がトップに参加したときとかにやさしく接してくれて。

今でも安藤選手のサッカーに対する熱量だったりとか。振る舞いというところもすごい尊敬している選手なので。

本当に悲しいなというところがあると思います。

 

〇新人戦続いていきますけど、それに向けての意気込みなどは?

昨日負けてしまって。レギュレーション的にも厳しくなってきてしまっているんですけど。(決勝トーナメントに進めるのは各グループの首位3チームと、2位の最上位の1チームの計4チーム)

明日たくさん点を取れば望みがつながるというところなので、そこはチーム一丸となって。

本当に慶應の意地じゃないですけど。自分たちのプライドを持って、決勝トーナメントに行けるように、というところと。

個人としては、予選からあんまり自分が試合に絡むというよりは、ベンチだったりということが多くて。

先輩とか同期がここまでつないでくれたので。自分が責任を持って次につなげるしかないかなというふうに思います。

 

〇今年は後期になってけっこう同期の選手も(関東大学サッカーリーグの)試合に出るようになっていますけど、武君(FW香取武、東洋大)とか。それについてはどう感じていますか?

武は、インスタのDMとかでやりとりしているんですけど。

やっぱりすごい刺激になっていますし。「自分も早く出なきゃな」っていう危機感もありますし。

みんな、刺激になっていますし。自分もそこにどんどんガツガツ、絡むじゃないですけど。

自分も「俺も出ているんだぞ」と胸を張って言えるような選手になっていきたいと思いますね。

 

 

〇フロンターレのサポーターの方にメッセージをお願いします。

ユース卒業して「どこに行ったんだろう」と思っている人も多いと思うんですけど。

慶應大学で頑張ってやっているので。

今後も応援していただければと思うので。

今後も応援よろしくお願いいたします。

 

 

手術をしGKとしてのトレーニングがままならない時期もあったという山本健翔。しかし、その期間に取り組んできたビルドアップのトレーニングが、この日のプレーにもつながっていたように思えました。

「フロンターレで育ててもらった意義を示したい」「自分を信じてきたチームに感謝を伝えたい」と臨む大学サッカー。

慶應義塾大というGKにも高いビルドアップの力が求められるチームの中で、これからどんな成長を見せていくのか、どんなGKになっていくのか。とても楽しみにしています。

 

(文中敬称略)

CC BY-NC-ND 4.0 This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International License.

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