8連敗を喫するなど、2005年のJ1復帰後では初めてではないか、という苦しみを味わった2011年の川崎フロンターレ。
そんな苦しいシーズンの7月に湘南ベルマーレから期限付き移籍で加入したのが、GKの松本拓也さん。
試合に出場することはなく、在籍したのはその年のみ。しかし、時には熱い言葉を投げかけるなどして、サポーターをも鼓舞。ピッチに立てなくとも、チームを支えようと奮闘、記憶にも残る選手でした
湘南への復帰、ギラヴァンツ北九州を経て、加入したブラウブリッツ秋田時代の2016年には、天皇杯でフロンターレと対戦し、等々力に帰還。
2020年からはFC岐阜でプレー。桐畑和繁や茂木秀、フロンターレU-18出身の岡本享也らほかのGKと切磋琢磨しながら、J2復帰を目指すチームを支えました。
昨年12月21日、FC岐阜は松本さんの現役引退と、スクールコーチ就任を発表。
1月8日、岐阜市の商業施設「マーサ21」で行われたFC岐阜の新加入選手お披露目会の前に、松本さんの引退のあいさつがありました。
この記事では、その模様を伝えたいと思います。
あけましておめでとうございます。
今年も。今年もですね、よろしくお願いします。立場は変わりますけど。
12月の中旬にリリースがあって、2023シーズンで現役を引退することを決めて、今年からはFC岐阜のスクールでコーチをすることになりました。
11月の終わりに、契約満了の提示を受けて、リリースが出たときも、「また、どこかでプレーする姿を見たいです」「見られたらうれしいです」という声を、本当にたくさんのかたからいただいたんですけども、良くも悪くも、FC岐阜のせいで、「選手をやりたい」とはちょっと思えなくなってしまいまして。
でも、FC岐阜のおかげで、新たなスタートを切ろうという、きっかけをもらったので。
まあ、良くも悪くも。まあ、ただ、僕は2020年に加入してから、コロナが始まって、いろんな人と制限があるなかで、関われるのが岐阜のクラブ関係者であったり、岐阜のかたたちとの関わりというのがすごい多いなかで、岐阜の現状であったりとか、「こういうことをやってほしい」とか、それができるかどうかは、分からないんですけど。
昨シーズンの中で、いろんな選手とごはんに行ったり、話をしているなかで、陽介くん(柏木陽介)と順也くん(田中順也)が、ここに残るっていうなかで、またその人たちとまた別の形でこのクラブと携われるのは、楽しいんじゃないかなと思って、僕も引退をスパッと決めて。次の道に進もうと決めました。
何ができるかどうかは分からないですけど、僕自身のこのキャラクターというものを、うまく生かしながら、岐阜のサッカーの普及であったり、ゴールキーパーの普及というものを、やっていきたいな、と。
所属はFC岐阜になりますけど、岐阜県のために、何か行動していければな、と、今は思っています。
まずトップチームに関しては、僕ははっきり言って他人事です。頑張れよ、と。それしかないんで。
頑張ってもらうしかないんで。
これから新しく入る選手。また、甲斐(甲斐健太郎)であったり、粟飯原(粟飯原尚平)であったり、上を1回経験して、ここにまた戻ってきてくれる選手がいます。
彼らがまたやってくれると思います。なんで、本当に頑張れよ、としか言いようがないです。
また、みなさんにお願いしたいのがですね、僕、選手をやめるって発表してから、ほんとにすっきりしました。
肩の荷がすっきり抜けるってこういうことなんだな、と。
自分であんまり意識していなかったですけど、知らないうちにいろんな重圧に押しつぶされています、選手って。
なんで、本当にみなさんのサポート、必要です。支えてあげてください。
時には厳しいことも、必要だと思います。でも、あんまり厳しすぎても、今のこの世間的にSNSが発達したりして、見えてしまうこの現実。現状。
そういったもので、よりいろんなものがのしかかってしまうので。みなさん、本当に下から支えてあげてください。それだけです。
このあと、面白いことがいろいろあると思うので、あんまりしんみりした感じにはしたくないので。平松さん(スタジアムDJの平松伴康さん)。ちょっとお願いします。
(平松さん)
-本当にお疲れさまでした。13年間、特別指定も含めて14年間、どうでしたか?プロサッカー選手の期間というのは短い感じでしたか?
まじで、短いです。
-そうですか、振り返れば。五つのチームを渡り歩いてきた中で、さまざまなサポーターの、さきほども声であったりとか、厳しいものも、うれしいものもあったと思います。何か、こう覚えているものってあったりしますか?
僕は比較的厳しい言葉をもらうことのほうが多かったです。
-そうですか。覚えていることって? 悔しかったなってものがあればお願いします。
ええと、SNSですかね。「松本選手、こういうミスが多いのでそろそろやめてください」
-言うほうは、言うに言っちゃう現状がありますからね。
そうですね、僕もそろそろ言ってもいいかなと思うんですけど。
-でも、本当に厳しい言葉もそうですけれども、うれしい言葉も、SNS、ないし、スタジアムから聞こえてくる言葉って伝わっていますよね?
あの、伝わります。みなさん、本当に長良川だとトラックがあるじゃないですか。
距離あるように感じますよね。思いのほか、聞こえていますよ。
特に、いい言葉ももちろん聞こえます。けど、その言い方は悪いですけど、野次的なもの。そっちのほうがめちゃくちゃ聞こえます。
なんで、ちょっと気を付けてくださいね。
-どうですか、松本選手は厳しい状況、岐阜3年戦ってきましたけど、本当に苦しい期間、コロナという意味はもちろんあると思いますけど、ここから岐阜が変わろうとしている、去年もなかなか結果が出なかったなかで、選手たちは「変わっているよ」っていうメッセージを出し続けていたじゃないですか。
松本さんから見て、岐阜ってこれからどういうふうに変わっていくと思われますか?
若返りはしましたよね。若くなりましたよね。若い子たちが何を築いて、どうしていくか。これに懸かっていると思います。
-ピッチで躍動する若手に対して、みなさんの声がビビッドに届くよ、というところですよね。
そうですね。甘やかしも良くはないんですけど。…まあ、ほどよく。
-本当に行間に選手の苦悩というのが、すごく見え隠れするなっていうのが思います。で、そんななか、これから松本選手から、松本スクールコーチになって、下からチームを支えていくことになります。どんなサッカー選手を育てたいという夢はありますか?
どんな。もちろんFC岐阜で、将来的にはトップで活躍してくれる選手っていうのをつくっていきたいと思いますけど。
やっぱり、岐阜県出身の選手って、みなさん応援したいですよね? そういう選手、どこに行っても活躍できる選手っていうのが、増えていったらいいな、と思うし、そのほんの少しの手助けができればいいな、と思っています。
-もう、いつごろから次の動きになっていくんですか?
ええ、もうふらふらと。
-いろいろと回られて、みなさんと接する機会も、スタジアムでも、これからいらっしゃるということですよね?
そうですね、ゴール立てたりとかしますね。
-となると、より近い存在になっていくと思いますので、ぜひ、いろんなことを松本選手をやっていたからこそ、分かることもあると思いますので。
そういったことをサポーターのかたに教えてもらってもいいですか? シーズン中。
とにかく楽しんでください、ということですね。勝っても、負けても結局、勝負ごとなので。全部勝てるっていうわけでもないし、全部勝てるにこしたことはないですけど。
もちろん、勝ちを目指していますけど。戦っていくなかで、どれだけ準備しても、「あれっ?」っていうときはやっぱりあるので。
そのときに落胆の色を見せすぎないようにしてください。
-それは、やっぱり雰囲気が、良くない空気が流れると、派生するというか伝染するということですよね?
そうなんですよね。あの、特に。特にというか、僕もピッチでプレーして、思いましたけど、落胆の色ってもろにのしかかってくるんですよね。
ため息にしろ、「何やっているんだよ」っていう雰囲気って、すごく充満してくるんですよね。
特に長良川って、ちょっとそういうのを感じるのって多いので。そういったところを、一人一人の意識で変えていってもらえれば、もっともっとのびのび、プレーできるのかな、と。特に若い子たちが増えてくる、これからは、なっていくのかな、と思います。
-分かりました。2024年、雰囲気のいい長良川を一緒につくっていきましょう。また、松本さんたちの支えも必要になりますので、これからもどうぞ、よろしくお願いします。最後にひとこと、みなさんにメッセージをお願いいたします。
ええと、子どもたちいっぱいいますね。スクール、入っていない子? いるかな? いるね?
1月10日から、30日まで早期入会キャンペーンというのをやっています。なので、興味があれば、無料体験からでもいいので。まずはクラブのオフィシャルサイトから、スクールのところをぽちぽちっと見てもらえれば、非常に助かりますし、単体のチームじゃないので、FC岐阜のサッカースクールって。
来て、一緒にサッカーやってもらえればな、って思いますし、大人のスクールっていうのもあるので、実は。
定員的なものもあって、入れる、入れないというのはあると思うんですけど、ぜひそういったところでも違う楽しみ方をやってみていただけたらな、と思いますし。
ファンクラブのほうもやっているので、ぜひ。(会場を見渡して)大体、入会してそう…。
自分なりの楽しみ方で、これからのFC岐阜を、一緒に支えていって、よりいいクラブに、みんなでしていきましょう。みんなのFC岐阜なので。
しっかり、これが終わった後も、僕らのスポンサーであるマーサさんにお金を落として、帰っていただきたいと思います。
また、これからもよろしくお願いします。ありがとうございました。
◇
現役時代に味わった苦しい想いなども、率直に語り、FC岐阜をプレーする選手たちを支えてほしい、とサポーターに呼びかけた松本さん。
発する言葉のひとつひとつには、熱があり、想いがあり、人々の心に届くものがありました。
これから、その熱い思いを胸に、どんな選手を育てていくのか、岐阜という土地にどんなものをもたらしていくのか。
とても、楽しみにしています。
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