10月10日、富士通スタジアム川崎では、川崎フロンターレU-18がプリンスリーグ関東第15節、前橋育英戦に臨みました。
当初は、等々力第一サッカー場で無観客で行われる予定だったこの試合は、会場を変更し、開幕戦以来の有観客に。多くの人々が9勝1敗で首位に立つフロンターレと、7勝1分け2敗で2位の前橋育英の上位対戦を見守ることになりました。
なお、プリンスリーグ関東は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、延期となった第10節から13節までの4試合の中止が決まり、計14試合によって年間の順位が決まることになりました。
【川崎フロンターレU-18 プリンスリーグ関東第15節 vs 前橋育英】
10月10日(日)午後6時45分キックオフ 富士通スタジアム川崎 晴れ 414人
フロンターレの先発は、GKキャプテンの1青山海、最終ラインは右から2高畠捷、15高井幸大、20松長根悠仁、6田中慶汰、ボランチは18大関友翔、5田鎖勇作、右MF23川口達也、左MF7入江流星、前線には10五十嵐太陽、9田中幹大。
前節鹿島アントラーズユース戦の32岡野一恭平に続き、川口が初めて先発に入ることに。
一方の前橋育英の先発は、GK1渡部堅蔵、最終ラインは右から2岡本一真、5柳生将太、キャプテンの4桑子流空、6岩立祥太、ボランチは7根津元輝、14徳永涼、トップ下10片柳翼、右に11渡辺亮平、左に23小池直矢、前線には9守屋錬太郎。
スタンドにはサポーターらが多くの幕を出し、太鼓や手拍子で選手たちを鼓舞。また多くの前橋育英の選手たちの家族らも、伝統の黄色と黒のユニホームを着るなどして見守るなか、始まった試合。
中央で多くの浮き球が入り、セカンドボールを拾い合う時間が続いていくなか、フロンターレは、ボールをおさめた川口が前に持ち出し、そのスルーパスに五十嵐が抜け出そうとするなど、次第に前に。
2分には高畠が仕掛け、右コーナーキックを得ると、川口が左足でボールを入れたところから、こぼれ球を拾った入江、さらには松長根と立て続けにシュートを打ちますが、前橋育英はブロック。前橋育英もそこからカウンターに持ち込もうとしていきますが、中央のスペースを仕掛けてきた小池に対して、高畠が絞ってカバー。大関につなげて、再びマイボールにしていきます。
フロンターレは田鎖の縦パスを、うまく間で田中幹大がおさめ、リターンを受けた田鎖の左サイドを突くパスを、入江が受け、再び受けた田鎖が前に動き出す田中幹大を狙い、パスを入れていくなど、うまくかかわりあいながら、相手陣内へ。
高井や松長根、大関や田鎖らが後ろでボールを回していこうとする場面では、前橋育英が厳しくプレスにいきますが、蹴りだすのではなく、しっかりつなげる姿勢を見せ、攻めに持ち込もうとしていきます。
6分には前橋育英、右サイドを突く鋭い浮き球を入れていきますが、田中慶汰が頭で対応。このボールを入江がおさめ、五十嵐に預けると、五十嵐のスルーパスに、入江がエリア左へ抜け出していきますが、オフサイド。
一方の前橋育英も、桑子や柳生、徳永涼や根津らがテンポよくボールを動かす時間をつくり、右サイドに流れた守屋がボールをおさめるなどしていきますが、フロンターレは五十嵐や田中幹大もプレスバックをかけにいき、間で受けた大関が前にうまく持ち出して、右サイドを突くパスに川口が抜け出しそうになるなど、攻めに転じていきます。
15分には、田中幹大がボールをおさめ、受けた五十嵐が左サイドを突くパスを出すと、入江が田中慶汰とのパス交換から前へ。入江のパスを受けた五十嵐が左サイドをさらに仕掛け、折り返しますが、渡部がセーブ。相手ゴールをおびやかしていきます。
田中幹大がうまく体を入れ、マイボールにするなど、前の選手たちも献身的にプレーを重ね、松長根が右サイドを突くフィードを入れるなど、長いボールも交え、攻めの機会をさぐりにいくフロンターレ。
19分には右サイドで高畠と川口が囲い込むようにしてボールをものにし、受けた田中幹大が反転。そのスルーパスに五十嵐がエリア内へ抜け出しそうになりますが、前橋育英の守りが対応。前橋育英も守備から攻めへの切り替えの良さを見せ、間で受けた笠柳から左に展開すると、岩立が精度の高いクロスを入れていきますが、青山がセーブ。
21分には、右サイドで前橋育英の岡本が鋭い出足でボールをカット。しかし、入江が奪い返し、頭で五十嵐へつなぎ、左サイドを仕掛けた五十嵐の折り返しに、田中幹大が迫りますが、シュートまではつながらず。
飲水タイムをはさんで、27分には、大関からエリア外右で受けた五十嵐に、前橋育英がファール。フリーキックを得ると、川口が遠いサイドに入れたボール、田鎖が触れますが、折り返すことはできず。
さらにフロンターレは高井や松長根、田鎖や大関がボールを動かしていき、31分には松長根がボールをカット。田中幹大につなげ、五十嵐とのパス交換から左サイドの高い位置へ抜け出した田中幹大がクロス。これを前橋育英がクリアし、右コーナーキックに。
川口がボールを入れると、エリア左、おさめた五十嵐がシュートを打ちますが、枠はとらえられず。
33分にはさらに、ボールを巧みにキープし、前に持ち出した大関が左サイドを突くパスを出すと、五十嵐が仕掛け、折り返し、田中幹大が迫りますが、渡部がセーブ。
一方の前橋育英も直後には、岩立が前に持ち出し、右サイドを突くパスを出すと、岡本がクロスを入れていきますが、エリア内で高井がカバー。立て続けに前橋育英がコーナーキックを得ていきますが、正面へのセカンドボールを入江がカット。最後には前橋育英のファールとなり、流れを渡さず。
さらにエリア前にすり抜けていこうとする守屋を狙い、浮き球を入れていきますが、田鎖が粘り強くマイボールに。うまくエリア前のスペースで受けた笠柳に対しては、田鎖が体を張り、立て続けに正面に縦パスを入れ、こじ開けにかかる前橋育英の攻めにも、人をかけ、集中した守りを見せていきます。
五十嵐や田鎖、大関が中央で囲い込むようにしてボールをものにし、そこから攻めにつなげていくフロンターレ。41分には田鎖から、右サイドの間で川口が受け、前に。高畠が駆け上がり、空いたスペースを突いてミドルシュートを打ちますが、枠はとらえられず。さらに高井がボールを持ち上がり、一気にエリア近くに抜け出すなど厚みのある攻めを見せていきます。
45分には五十嵐がカット。いったん左サイドに流れた大関へ展開し、中央を経由して右へ展開。高畠がクロスを入れると、エリア内左、田中幹大が合わせますが、惜しくも左へ。
前半は0-0でタイムアップとなります。
両チーム、そのままのメンバーで始まった後半。立ち上がりは前橋育英、右に開いた岡本が斜めに仕掛け、そのパスに渡辺が正面へ。しかし、松長根が対応し、最後のところでシュートまではいかせず。
さらに前橋育英は、渡辺が下がり目に、徳永涼や根津が桑子や柳生とパスを回しながら、さぐりに。しかし、岡本のクロスを青山がしっかりセーブ。縦に仕掛けてくる岡本に対しては、松長根が体を投げ出して、その突破を阻むなど、好守を見せていきます。
7分にはエリア外右でフリーキックを得ると、川口が遠いサイドに入れたボールに松長根が走り込みますが、さわることはできず。さらに右サイドで五十嵐、大関、高畠がボールを動かしていき、最後は大関のパスから高畠が右サイドの高い位置へ。クロスはブロックされるも、フロンターレはエリア近くで時間を重ねていきます。
前橋育英のエリア前へのきわどい浮き球に対しては、松長根と高井がうまく連係し、起点をつくらせないフロンターレ。大関がセカンドボールを拾い、左サイドの田中慶汰につなげ、田中慶汰の縦パスに、入江が動き出し、仕掛けていき、コーナーキックを得るなどしていきます。
12分には入江に代わり32岡野一恭平。さらに高井のフィードに田中幹大が走りだし、前線では田中幹大や岡野一、五十嵐が連動して奪いにいき、高い位置でものにしていくフロンターレ。
14分には、左サイドの高い位置でフリーキックに。このフリーキック、川口が入れたボールに、頭で合わせたのは高井。ボールはゴールネットを揺らして、1-0。ついに先制点はフロンターレへ。多くのサポーターの拍手のなか、ピッチ脇の控えの選手たちとともに、喜びを分かち合います。
追いかける展開となった前橋育英は、前からプレスをかけ、奪いにきますが、フロンターレは田中幹大も下がり目でコンパクトにして対応。
16分には前橋育英は、渡辺に代わり16高足善が入り前線、笠柳が左、小池が右に。17分には右サイドでのスローインから岡本が高い位置へ抜け出しますが、岡野一が体を張った守備を見せ、続くコーナーキックもしのいでいきます。
前からの連動した守備と、そこからの攻めへの切り替えの速さを見せていくフロンターレ。20分には、岡野一がボールをカットし、ボールは五十嵐へ。五十嵐は右サイド、高畠とのパス交換からエリア外右へ抜け出し、正面やや左へパスを送ると、受けたのは田中幹大。丁寧に降りぬくと、ボールはゴール右へ、GK渡部の伸ばした手をかいくぐるようにして決まり、2-0。
すばらしいかたちで、フロンターレは突き放します。
直後には前橋育英、右サイドに流れた守屋が仕掛けて、折り返すと、エリア内、小池が迫りますが、大関がカバー。すぐさま、左サイドに位置していた五十嵐に入れていきます。
田鎖や大関がボールをうまく動かして、松長根の縦パスを五十嵐がおさめるなどしながら、次の1点も狙いにいくフロンターレ。飲水タイムをはさんで、五十嵐が田鎖のパスを下がり目でおさめ、反転から岡野一へスルーパスを送るなどし、失っても岡野一が厳しい寄せを見せ、流れをさらに引き寄せていこうとします。
フロンターレは、25分、大関に代わり30由井航太。
前橋育英のコーナーキックや、セカンドボールを拾って入れてくる浮き球からの攻めをしのいでいくと、28分には右サイド、田中幹大がエリア外右で飛び上がりながら、ボールを浮かせると、走り込んだのは五十嵐。粘り強く、たくみにボールをおさめ、相手のマークを剝がし、前に出て阻もうとした渡部をかわしてゴールの前に向かっていくボールを追っていきます。ゴール右、ポスト付近で懸命に右足を伸ばして体ごと押し込んで、3-0。
ゴール後には、足をつり、起き上がれなくなった五十嵐は、担架に乗せられ、17浅岡飛夢と交代で下がっていきます。
前橋育英は37分、柳生に代わり3徳永崇人が最終ラインへ。また、守屋に代わり15野本京佑が前線へ。
しかし、フロンターレは浅岡がプレスバック。また、由井もいい立ち位置からボールを奪い取るなどしていき、37分には左サイドに前橋育英が展開。岩立がエリア前に斜めに入れてきた鋭いパスを田中慶汰が小池と交錯しながらもカバー。体を張り、集中した守りを見せていきます。
38分には、フロンターレ、浅岡がボールを高い位置でカット。ボールは右サイドの高い位置、川口へ。川口はミドルシュートを打つも、ワンタッチあり、枠外に。
さらにフロンターレは、高畠や田中慶汰がよくカバーしてマイボールに。川口や田鎖、高井や由井がかかわり、岡野一が中央へ顔を出す一方で、由井が左サイドに移るなど、流れの中で立ち位置を変えながら、プレーを重ねていきます。
アディショナルタイムは3分。
岡野一が縦に仕掛けにいくなど、相手陣内で時間を使おうとするフロンターレ。サポーターたちは、トップチームと同じように「アバンテ」のリズムに合わせて、手拍子で背中を押していきます。
しかし、48分、前橋育英は右サイドからの攻めに。岡本がクロスを上げると、頭で合わせたのは高足。3-1。ここで試合はタイムアップとなり、3-1。
最後には1点こそ返されたものの、久しぶりに集まった多くのサポーターの前で、フロンターレは勝利。
10勝1敗、勝ち点を30まで積み上げたフロンターレは、残り3試合で3位につける三菱養和SCユース(勝ち点17)、4位桐生第一(同)との勝ち点差が13となり、2位以上が確定。
2015年から2017年にかけて3年連続で4位になるなど、あと一歩のところで届かなかった、プレミアリーグ参入戦の出場権を、初めて得ることになりました。
前半0-0 後半3-1 計3-1
得点:高井幸大、田中幹大、五十嵐太陽(フロンターレ) 高足善(前橋育英)
フロンターレの先発:1青山海(c)、2高畠捷、15高井幸大、20松長根悠仁、6田中慶汰、18大関友翔、5田鎖勇作、23川口達也、7入江流星、10五十嵐太陽、9田中幹大
交代:入江→32岡野一恭平 大関→30由井航太 五十嵐→17浅岡飛夢
控え:21菊池悠斗 26溝田大和 11小野寺瑠 14大瀧螢 24吹田航晟 13久保田大吉
前橋育英の先発:1渡部堅蔵、2岡本一真、5柳生将太、4桑子流空(c)、6岩立祥太、7根津元輝、14徳永涼、10片柳翼、11渡辺亮平、23小池直矢、9守屋錬太郎
交代:渡辺→24高足善 柳生→3徳永崇人 守屋→15野本京佑
控え:31須永大進 16秦英志 29近藤征也 8鈴木太智 17大竹駿 32若林大翔
試合後、先制点を決めた高井選手から話を聞きました。
― ゴールシーンを振り返って。
本当に思いどおりのボールが来て、今日は相手が2枚、僕についていて。マークが2枚ついていたんですけど、うまくかいくぐれて、上からたたきつけられて、非常に貴重な1点目だったので良かったです。
― 守りについては。
集中して、目標を持って、守れていたんですけど。でも、最後のところで失点してしまって。ボールに触れたんですけど、自分のところでマークを外してしまったので、そういうところは突き詰めていきたいと思います。
― 久しぶりにサポーターが入った試合になったが。
サポーターの人がいると元気になる。最後のところでもうひとつ頑張ろうとか、そういう気持ちが芽生えるので。本当にサポーターがいるというのはありがたいことです。
― このあと、しばらく間が空きますが。
この期間はしっかり強化に充てて。次の参入戦に向けて。あとはリーグ戦もあるんですけど、それも含めて。これからあとのことも考えてやっていきたいです。
日曜日の夜にもかかわらず、フロンターレのサポーターや、前橋育英の選手たちの家族も含め、414人もの人々が富士通スタジアム川崎のスタンドを埋めた、熱を帯びた雰囲気は、すばらしいものでした。
残り3試合となったプリンスリーグ関東。そして、その先のプレミアリーグ参入戦。フロンターレを愛する多くの人々が、どんな試合を見せていくのか。どんなものを積み重ねていくのか。楽しみにしています。
(文中敬称略)
写真はなつこさんからもいただきました。ありがとうございました。
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